2021年4月にEveが発表した8枚目のデジタルシングル『夜は仄か』(よるはほのか)。
『呪術廻戦』の主題歌『廻廻奇譚』でストリーミング再生1.2億回を突破したEve。いまや海を超え世界からの人気を獲得している注目シンガーソングライターです。
『夜は仄か』は、Eveの魅力をさらに広める楽曲として注目されています!
タイトルにふさわしい仄暗さを表現したアニメーションMVは、タイ出身のクリエイターZemyataが手掛けています。
『夜は仄か』の主人公は人生に絶望した少年。MVの中心に登場する物憂げな青年です。
生の絶望を否定することなく、あたたかさに着地する『夜は仄か』の歌詞を考察していきます。
『夜は仄か』歌詞考察
今日も生きてしまった
”今日も生きてしまったな”
人生に絶望し、憂う気持ちを持った主人公が放った言葉。
あたかも死が来るのを待っているような心情が読み取れます。
人とのかかわりも面倒になり、嘘や上辺の付き合いを繰り返してる様も読み取れます。
コインランドリーで寂しく洗濯する主人公がMVに登場しますが、この冒頭の歌詞は現代社会の人々の気持ちを代弁しているようにも思えます。
呼びかける声
ここではリスナーに呼びかけるような歌詞が続きます。
”蔑んだその目を閉まっておくれよ”
主人公から呼びかけられるような言葉に、はっとさせられた人も多いのではないでしょうか?
「仄日(そくじつ)」とは西に傾いた太陽のこと。
煙草の煙が漂う夕方、たった一人で孤独感を抱く主人公が目に浮かびます。
主人公は、もう会えない愛しい人を喪失した模様です。
思い出の中にいる「あなた」へ
主人公の心の中に存在する、忘れられない人。
”あなたに寄り添い 今すぐに言いたい”という切実な思いが込められています。
「花心」とは移ろいやすい心を意味します。
過去、自分自身から離れてしまったのか。逆に捨てられてしまったのか。
どちらにせよ、主人公の中に沸き上がっている「会いたい」という気持ちがただただ悲しく流れ去ってゆく状態が読み取れます。
「愛されたい」と願ってしまった
主人公は冒頭から、生きることに対して消極的でした。
”寂しい星”とは、いずれ訪れる「死」の表現と言ってもよいでしょう。
しかし「愛されたい」と感じてしまってから、ほんのりと生への希望が生まれてしまいます。
もう会えない「あなた」への想いが、主人公を蘇らせているのです。
しかしその姿が現れる様子はありません。
主人公は、愛しさと悲しさが綯い交ぜになった気持ちを抱き続けるのを誓っているようです。
ただそばにいたい
主人公はひたすらに「あなた」との思い出を回顧します。
もともと生への活路を見出せなかった主人公。昔から「誰にも言えない秘密」「笑顔の裏の影」を持っていたのでしょう。
「あなた」は主人公のそんな闇の部分にも優しい眼差しを向けてくれていた人なのだということが分かります。
”知らない自分を知って欲しいんじゃなくて”
「あなた」との間にこれ以上の心の交流を求めるのではなく、ただシンプルに「会いたい」—。
そんな純粋で無垢な主人公の恋心が読み取れる歌詞です。
重なる仄日と「あなた」
主人公の胸を高鳴らせ、カチカチに固まった心を溶かしてくれた人。
そのぬくもりを思い出し、主人公は今自身が孤独であることを強く痛感させられます。
西に傾いてゆく夕日に「あなた」を重ねて、たった一人再び孤独な夜を迎えるのです。
淡い期待と恋心を寄せて
1番と異なるのが「水心」の部分。
「水心」とは「魚心あれば水心」ということわざの略です。
「魚心あれば水心」とは「相手が好意を示せば自分も相手に好意を示す気になり、相手の出方しだいでこちらの応じ方が決まること」を意味します。
主人公は、日々自分が「あなた」への恋心を燃やしているために、彼女もいつか応えてくれると胸のどこかで淡く期待しているのかもしれません。
しかし、その恋が既に叶わないのも事実。
だったら、花が咲いて散るように、自分の恋心も命の最後まで咲かせ続けようと誓っているのだと思います。
愛されたい少年
2番のサビです。
主人公は何度も「あなた」の面影を追い、「愛されたい」という強い気持ちを抱きます。
叶わない思いを浄化させるように、夜空のもと踊ります。
夜は明けてゆく
孤独が主人公を覆う中、「愛されたいよ」という気持ちが解き放たれます。
主人公をずっと締め付けていた心の内奥からの叫びです。
「愛されたい」とは極めて原始的な欲求。
しかしそれが放たれた今、夜は仄かに明けてゆく結末を迎えます。
「あなた」という存在を通して知った、本当の気持ちにも気付いた主人公の夜明けです。
今日も生きてしまったな
根本的な願い「愛されたい」を知った主人公。
その願いが「あなた」によって叶わなくても、前よりは強い気持ちで夜を迎えることができているように思います。
”ただなんだか気分はいいみたいだ”
今日を生きることを強く憂いていた主人公が得た、生の快感。
仄かな希望が聴く者の胸に宿ります。
私たちの毎日もすべてが爽快に進むわけではありません。
しかし、かけがえのない人との出会いや恋で、生きる希望が湧くことは確実にあります。
すべてが明るくはない。しかし確実に夜は明けてゆく。そのふたつに「仄か」が掛けられているようにも思えます。
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おわりに
大人気シンガーソングライターEveの『夜は仄か』。
絶望さえも肯定するような強い歌詞がEveらしく、独自の哲学観がさらなる人気を呼びそうです。
暗い夜を迎えている人はぜひEveの楽曲を聞くのをおすすめします!