スズキユウスケ(Vo・G)、スズキナオト(G・Cho)、ゆっきー(B)、ゆりと(Dr)で構成される4ピースバンド、オレンジスパイニクラブ。
淡い恋心や感傷的な心象描写が秀逸なオレンジスパイニクラブの『タルパ』の歌詞を考察していきます!
もともと「Theドーテーズ」というバンド名で活動していた彼らは、2019年に「オレンジスパイニクラブ」に改名。『タルパ』は「Theドーテーズ」時代に制作された楽曲です。
”タルパ”とはもともと「何かしらの力で実体化した空想上の人物」を指します。つまり「本当は存在しないけれど、ある人の想像上のなかでは確実に存在している人物」を示しているのです。
空想上の人物は
・いつでも会える
・ずっと一緒に居られるから「さよなら」がない
・本当はいない
このような特徴が挙げられますが、それらが楽曲にどのように反映されているのでしょうか?
『タルパ』の歌詞を考察していきます。
『タルパ』歌詞考察
主人公にしか見えない存在
「タルパ」という空想上の人物。主人公はどうやらタルパらしき人物と触れ合っているようです。
「主人公にしか見えていない人?」と思ってしまいますが、なんとなく寂し気な雰囲気が伝わってきます。
”やっぱり浮かぶのは君だけでした”
この歌詞から、主人公はお別れした恋人を恋しく思うあまり、空想上で「君」を創作し、失恋の悲しい気持ちを持て余しているのが分かります。
付き合っていた頃と同じように話しかけたり、触れてみたり。
しかしもうそこにいない「君」への恋慕と失意が、主人公に「君」の幻想を見せているようにも感じます。
全て夢だった
主人公は「君」を”タルパ”にして、空想上で触れ合っている事実を自嘲します。
お別れした辛さが自分をおかしくさせているのも、十分承知なのです。
しかし昔の楽しかった思い出を忘れることができずに、空想上で「君」を抱きしめてしまいます。
同時に「君を守る」と誓った過去や、お別れの時の「二度と話さない」という誓いが胸をよぎって、もうそこに「君」がいない現実を強く痛感してしまっているようです。
”「タルパってなによ」”
この一言から「君」の冷たくも優しい性格が想像できますね。
そんな「君」を今もなお愛おしく思っているのに叶わない、悲しい恋心が伝わってきます。
訣別と未練
主人公は「君」を”タルパ”にすることをやめ、「君」を忘れようと決意します。
”バカだったよ 笑えないくらい”
幻想で「君」を実体化していた自分が怖くなったのかもしれません。
しかし、「君」への恋心だけは捨てずに持っていようと諦められない未練もたっぷりあります。
”お願いね”
この言葉に続くのは「僕を忘れないでね」「まだ好きでいさせてね」など、断ち切れない恋心の言葉が続くのが予想されます。
受け入れられない現実
「君」との思い出を何度も振り返る主人公。
お別れした後の方が、当時の幸せがより輝いて思えてしまうものです。
だから余計に、「君」の不在を受け入れられない絶望がこみ上げてくるのではないでしょうか。
主人公の頭の中は、【「君」がいた幸せな現実】と【「君」が不在の不幸な現実】が右往左往し、主人公を苦しめています。
湧き出る過去の思い出
拙いながらも「忘れよう」と決意した主人公ですが、「君」との幸せな思い出がそれを許しませんでした。
自分の欠点を受け入れてくれたこと、ふざけあったこと。
主人公より少し大人で、でもどこか幼稚な「君」の姿がイメージできます。
「君」にされた薄化粧が当時は嫌だった主人公のようですが、お別れした今となっては「君に会えるなら何でもする」と懇願すらしています。
しかしそれが叶うことは、もうありません。
未練心
ここにきて主人公の未練が爆発します。
「さよなら」を強く拒否する気持ちがあふれ出します。
”いなかったらさよならもねえや”
空想上の人物ならばいつでも会えるし、永久に一緒という考えが主人公の頭をよぎります。
「タルパ」というタイトルは、そんな悲しい感情を例えているのでしょう。
外にも出られない
失意の底にいる主人公は、たったひとりの部屋で辛い現実を受け入れようとしています。
ふたりで使っていた冷たくなった毛布の中で、ひとり泣いているのでしょう。
傷心を抱えて
「君」がいない現実をまだ見ることができない主人公。
「君」はいなかったことにして、「さよなら」自体に”バイバイ”と告げているようにも思えます。
「君」との思い出自体も無かったことにして、胸の痛みを忘れようとしてる主人公の姿が悲しく映ります。
主人公は「君」への恋心と未練を断ち切ることはなく、これからもしばらく恋慕に悩まされるようなラストです。
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おわりに
失恋の絶望と悲しみを秀逸に綴った『タスパ』。
「タスパ」と「君」を重ねている描写もオレンジスパイニクラブらしくユニークです。
失恋で悲しみに覆われた心を「共感」で溶かしてくれる『タスパ』、ぜひ聴いてみてください。