「ロビンソン」は1995年4月にリリースされたスピッツの11thシングル。
バラエティ番組「今田耕司のシブヤ系うらりんご」エンディングテーマ(1995年3~4月)、ドラマ「白線流し」挿入歌(1996年1~3月)、キリンビバレッジ「午後の紅茶」CMソング(2001年)などに起用されたタイアップソングです。
6thアルバム「ハチミツ」(1995年9月)、シングル集「CYCLE HIT」(2006年3月、2017年7月)などにも収録されています。
ボーカル&ギターの草野マサムネさんが作詞・作曲、音楽プロデューサーの笹路正徳さんとスピッツが編曲を担当した「ロビンソン」の歌詞の意味を考察していきましょう。
ロビンソン 歌詞考察
タイトル「ロビンソン」の由来
「ロビンソン」というタイトルから、28年間も無人島で過ごした漂流者の冒険物語「ロビンソン・クルーソー」を連想する人も多いでしょう。
ところが直接の由来は、タイにあるロビンソン百貨店。
旅先で草野マサムネさんの印象に残ったデパート名で、仮タイトルがそのまま本タイトルになったそうです。
そのためロビンソンという名の漂流者もデパートも歌詞には出てきません。
むしろ歌物語の舞台となっているのは身近な「河原」です。
こちらのモチーフとなったのは、福岡市早良区出身の草野マサムネさんの地元を流れる室見川(むろみがわ)。
スピッツのファンのあいだでは「ロビンソン川」とも呼ばれています。
ちなみに福岡市早良区で育った椎名林檎さんが「正しい街」(1stアルバム「無罪モラトリアム」収録曲)の歌詞にしたためていることでも有名ですね。
おそらく春、川沿いの道を自転車で走る男女といえばさわやかな青春の1ページのようですが、「せつない、疲れた」などネガティブな言葉も混ざっています。
シンプルな表現なので、深読みしようと思えば際限なく想像が膨らみそうですが、ひとまず先に進みましょう。
主人公の男性が後ろ、女性が前をそれぞれ自転車で走っていて、追いついた状況です。
女性は大きなリュックなどを背負っていたのでしょう。
その中には「懐かしいレコード」と「大きな何か」が入っていることを男性は知っています。
もしかしたら「大きな何か」はリュックとは別に担いだギターかもしれませんし、「大変な出来事」の比喩という可能性もあるでしょう。
顔をしかめたくなるほどまぶしい男女2人のようですが、男性はなぜか「せつない」思いを抱えています。
こうして青春にありがちな日常のなかに、少々不穏な謎が混ざるという「魔法」が構築されました。
とくに思春期の恋愛というのは「2人きりの世界」に閉じこもりたいものかもしれません。
それにしても、川沿いの道で「2人きりの世界」を作り上げたと思ったら、宇宙にまで飛ぶという急展開です。
「魔法」の一言で、日常から非日常へ、すんなり移行してしまいました。
わかりやすい言葉ばかりが並んでいますが、さまざまな解釈が可能な抽象的な表現です。
いったい何が起きたのでしょうか。
怖い都市伝説がある?
大前提として、草野マサムネさんは自ら歌詞の解釈をしないタイプの作詞家です。
むしろリスナーそれぞれに想像を膨らませてもらうため、抽象的で詩的な歌詞について説明しないスタイルを貫いていると考えられます。
ただ、音楽バラエティ番組「関ジャム 完全燃SHOW」の「スピッツ特集」(2019年10月放送)で、ゲスの極み乙女。のボーカル&ギターなどの川谷絵音さんが大胆な解釈を展開しました。
川谷絵音さんはindigo la Endというバンド名をスピッツの7thアルバム「インディゴ地平線」(1996年10月)から名付けたほど、スピッツの大ファンです。
また、草野マサムネさんが1990年代に、作詞する際のテーマは「性と死」だと思うといった趣旨の発言をされたことも事実。
しかし「尖ったものは性、丸いものは死を表している」というのは、川谷絵音さん独自の解釈であって正解とは限りません。
2番の歌詞に出てくる「丸い窓」はカーブミラーで、女性が既に亡くなっていることを表しているかもしれませんが、「怖い都市伝説」の域は出ないのでご注意ください。
女性は男性以外には言いにくいほどの大きな悩みを抱えつつ、呼吸を止めずに生き抜いていると解釈することもできるでしょう。
夜、自宅に帰る途中の女性を待ち伏せした男性が告白し、2人はようやく付き合うことになったという展開も考えられます。
音楽が大好きな2人なので「2人にしか通じない音楽」を生み出して、世に放ち、宇宙にまで響かせよう、という壮大な計画を語り合っている可能性もあるでしょう。
2人の夢が現実として生まれ変わった結果が「ロビンソン」という楽曲かもしれませんね。
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さいごに
草野マサムネさんのハイトーンボイスとギター三輪テツヤさんのアルペジオが特徴的な「ロビンソン」。
竹内鉄郎監督によるモノクロのMVは、演奏シーンとロード―ムービー仕立ての映像が混ざり合う構成が印象的です。
とくにロード―ムービー風の映像には、アキ・カウリスマキ監督の映画「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」(1989年公開)へのオマージュが散りばめられています。
併せてお楽しみください。