『ray』は2014年に発表されたBUMP OF CHICKENの二作目の配信限定シングル。
作詞作曲は、藤原基央。BUMP OF CHICKENを代表する楽曲と言っても過言ではありません。
別バージョンでは初音ミクともコラボレーションしており、初音ミクにとっても初のバンドとのコラボ作品となったことでも話題になりました。
めったにテレビ出演をしないBUMP OF CHICKENですが、『ray』でミュージックステーションと紅白歌合戦にも出演しました。
”ray”とは「光線」という意味があります。
「細長く光る光り」を表現するために”光芒(こうぼう)”というタイトル候補もあったそうですが、難しいために”ray”になったのだとか。
「お別れ」ではじまる『ray』に隠された歌詞の意味とは何なのでしょうか?
考察していきます!
『ray』歌詞考察
辛い喪失のさなかで
『ray』の冒頭は、お別れを彷彿させる言葉から始まります。
”お別れしたのはもっと 前のことだったような”
お別れした時を忘れるほどに、喪失の痛みを抱えている主人公。
”透明な彗星をぼんやりと探している”という歌詞からは、もうそこにいない存在を今もなお探し続けている悲しみが感じられます。
そして主人公は、寂しい時に限ってある唄を口ずさみます。
それを歌う時は、完全に寂しさに浸ることができていたと、もういない「君」に向かって語りかけているようです。
傷跡を引き連れて
喪失を体験した時、人はあてもなく歩きたくなるものではないでしょうか。
失った面影を求めるのか、別れた理由を探すのか、寂しさを昇華させるのか。
人によっては様々な理由がありますが、ここではそんな多くの人の心情を代弁してくれています。
”正常か異常かなんて考える暇も無い程 歩くのは大変だ”
主人公が、喪失体験によって傷ついた心をどう扱えばよいのか分からなくなっている感情も感受できます。自分をうまく律してる様子もうかがえます。
しかし、どんなに歩いても、時間が経っとしても、喪失によってできた傷が消えることはありません。
その人を深く愛した証拠でもあるからではないでしょうか。
思い出の陰に隠れながら
”理想で作った道”とは、主人公が求めていた世界=好きな人と一緒に歩める世界を指すのでしょう。
しかし、お別れした今は、思い出だけが輝いて悲しく光っています。
ここで主人公はずっと抱いていたことを問います。
”お別れしたのは何で 何のためだったんだろうな”と。
悲しい体験を通じて、その「意味」を問うてしまうのは人間の性です。
しかし「答え」の出せない主人公は、ただ立ち尽くすしかありません。
”時々熱が出るよ”という、唐突な語りも特徴的。
寂しさがひしひしと伝わってきます。考えすぎ、寂しさによる熱のことでしょう。
しかし、そんな熱の夢の中でしかもう会えない「君」。
その熱さえも、今の主人公にとっては大事な瞬間なのだと分かります。
暗闇の中に星を浮かべて
主人公はとても深い暗闇の中にいます。
しかし目をつむって星を浮かべて、その喪失の闇を少しでも輝かしいものにしようとしています。
BUMP OF CHICKENらしい表現です。
それはあたかも、もう会えない「君」を照らそうとしているようにも思えます。
そして時は無情にも過ぎてゆくもの。
”あまり泣かなくなっても 靴を新しくしても 大丈夫だ”
主人公自身がすこしずつ喪失に慣れつつあり、「君」を思い出すことが少なくなることもあるでしょう。
ここで言われる”大丈夫だ”の言葉は、「君を忘れても大丈夫だ」という新しい意味の言葉のようにも感じます。
どれだけ時間が経っても「君」を失った痛みは無くなることはない事実に、安心すらしているように思います。
透明だから、なくならない
”伝えたかったこと”とは「好き」「一緒にいよう」などという愛情表現の言葉でしょうか。
少しでもそんなありきたりな言葉を伝えていれば、今「君」は隣にいたのだろうか?といった後悔も感じられる歌詞。
”こんなにも”の後に、言葉が続かない余白に、その思いが込められているように思います。
そして『ray』の中でももっとも深い意味であろう歌詞、
”あの透明な彗星は透明だから無くならない”です。
透明だから「失う」概念すら存在しない=「君」を失うことはない。
そのような意味に解釈できるのではないでしょうか?
独自の哲学観が特徴の歌詞です。
人生は絶望的でも、最高
お別れを今もなお悲しく思う主人公。
しかし最初の歌詞よりは、人生そのものを肯定的に捉えるようになっています。
お別れした事実よりも、出会った奇跡に思いを馳せ、その美しさを大事にしようとしています。
辛く悲しい出来事の根本には、他者への愛情が伴っていることが多いように思います。
そんなことに気付かせてくれる、ほのかな光りが瞬く最後です。
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おわりに
いかがでしたか?
「寂しさ」「悲しさ」を「光」に変えてくれる『ray』。
苦しい時、そっと寄り添ってくれる名曲です。