「鯨の唄」はMrs. GREEN APPLE(ミセス、MGA)が2017年1月にリリースした、ティーンポップがテーマの2ndアルバム「Mrs. GREEN APPLE」リード曲。
2020年7月リリースのベストアルバム「5」にも収録されています。
音楽プロデューサーの蔦谷好位置(つたや こういち)さんが、2017年1月放送の音楽バラエティ番組「関ジャム 完全燃SHOW」で「2016年のベスト3」としていち早く取り上げたことでも注目を集めました。
作詞・作曲・編曲はボーカル&ギターの大森元貴さん。
編曲家の中西亮輔さんがストリングスアレンジ(弦楽器の編曲)を担当し、「須原杏ストリングス」が弦楽器の演奏で加わった壮大なバラードです。
今回は「鯨の唄」の歌詞の意味を考察します。
鯨の唄 歌詞考察
「鯨の唄」というタイトルの意味
「鯨の唄」はライブで披露されてから音源化されるまでに1~2年かかりました。
細野守監督作品を好む大森元貴さんが、映画をよく観ていた時期に触発されて作った曲ということで、「あの映画へのオマージュではないか?」と想像できるでしょう。
壮大なサウンドにふさわしく、歌詞全体で「生き物として生命を輝かせよう」という祈りが表現されています。
世界観はファンタジー。
タイトルからもわかるとおり、人間をクジラになぞらえています。
1番の冒頭で描かれているのは、自分の分身みたいに拡散していたアイデアが1つにまとまって「鯨の唄」になった、この壮大な曲を発表するまでには時間がかかった、という大森元貴さんの思い。
群れからはぐれたクジラがどうにか生き抜き、大海原をゆったり泳ぐ光景も目に浮かびます。
クジラがコミュニケーション手段として発する鳴き声は、「クジラの歌」とも呼ばれています。
その波長は10~40ヘルツが一般的ですが、「52ヘルツのクジラ」という珍しい個体が1980年代から発見されるようになりました。
人間が聞き取れる波長は20~2万ヘルツなので、「52ヘルツのクジラ」の鳴き声は人間には届くものの、仲間のイルカには高音域すぎて届きません。
この「52ヘルツのクジラ」が迷子になっている様子と、夜中に道を踏み外し、助けを求める必要がある人間の姿が重なります。
1番のサビです。
もし山で遭難したら、誰かに自分の「居場所」を知らせる必要があります。
救助のヘリコプターが来たら、手を振って大きな声を出すでしょう。
実際の迷子や遭難に限らず、困ったことが起きたり悩んだりしても、助けを求めれば必ず誰かに伝わるから、怖がらずに生きようというメッセージです。
「52ヘルツのクジラ」もヒレのような手を振り上げながら泳いでいることでしょう。
勇気を出して手を挙げよう
2番の冒頭では、大森元貴さん自身の作詞に対する思いが描かれています。
生命力を失いそうになるほど悩み、もがき苦しんだ時期があったのかもしれません。
毒気をはらんだ言葉が脳裏に浮かんだと考えられます。
それでもどうにか生命力を取り戻し、「ただ生きてほしい」と祈るほど純粋な歌詞へと昇華できた、という意味でしょう。
生きた心地がしない状態から、「生きてさえいれば大丈夫」と心境の変化が起きるまでのあいだに思ったことをストレートに歌詞にすると、何らかの危険が伴うのかもしれません。
実際に思ったことや経験したことをそのまま歌詞にするタイプの作詞家もいます。
対して大森元貴さんは、攻撃と防御を兼ね備えた理論武装をしたうえで、歌詞の世界観を作り上げるタイプなのでしょう。
たしかに「銃声」は毒気をはらんだ危険な言葉です。
ただし、陸上競技などで鳴らすスターターピストルや、救助信号(SOS)を送るための信号拳銃もあります。
泣くほど困っているときに助けを求め、意見を言うためには、まるで宣戦布告するくらいの勇気が必要でしょう。
もちろん本物の銃を撃つとか、暴力的に戦うわけではありません。
攻撃と防御の両方を意識しつつ、ただ生きるために助けを求め、必要な声を挙げてほしいという願いです。
ファンタジーの世界から現実へ
少し変化したかたちで1番のサビが繰り返された後のラストです。
「52ヘルツのクジラ」の高音の鳴き声は、大森元貴さんのハイトーンボイスや「鯨の唄」を聴くリスナーの泣き声とも共鳴するかもしれませんね。
ヒーローみたいな大森元貴さんやMrs. GREEN APPLEのメンバーたちが見守ってくれています。
クジラの気分になって一緒に海を泳いだので、そろそろ人間に戻って歩けるでしょう。
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さいごに
「鯨の唄」はMrs. GREEN APPLEのメンバー全員が黒髪で正装した、幻想的なMVも話題です。
撮影場所は、山梨県にある「河口湖音楽と森の美術館」(旧・河口湖オルゴールの森)でしょうか。
ちなみに歌詞の理解を深めるために、「鯨の唄」と併せて楽しみたい作品はこちらです。
ぜひ参考にしてみてください。