今回は2019年12月11日にリリースされたシングル「愛す」(読み:ブス)の歌詞考察をしていきます。
「愛す」は、ヴォーカル・ギターの尾崎世界観さんが作詞・作曲を手掛けました。
では早速歌詞の考察を始めていきましょう!
愛す 歌詞考察
MV「愛す」について
MV「愛す」はNHK「みんなのうた」で以前放送された「おばけでいいからはやくきて」のアニメーション製作を担当したAC部というテレビ番組・CM制作ユニットとタッグを組みました。
本MVは、いわゆるプロモーションビデオとは一線を画す、タイトル『ベイビーメイビー』という非常に情報量の多い独特のSFアニメーション作品になってます。
本楽曲「愛す」とMVは、”別物”感満載なのですが、時折絶妙に嚙み合っている部分があるのが面白いのです。
パラレルワールドを体感しているような不思議な感覚を覚えますが、回を重ねて鑑賞すると癖になるMVとなっています。
きみのそば
歌詞の中の登場人物は主人公と「君」の二人です。
楽曲タイトル「愛す」と書いて「ブス」と読ませたり、歌詞の冒頭で「ブス」と出てきたりと、この言葉はインパクトがありますね。
「ブス」と出てきますが、「君」に対してネガティブな想いを抱いている訳ではなく、寧ろその「逆」なのです。
主人公は「君」のことをかなり「愛しい」と思っているのですが、”可愛い”とは言っていませんでした。
また、愛しすぎて「逆に」「ブスとしか言えない」ということすら「君」に伝えることもなかったとあります。
「逆に」「ブスとしか言えないくらい」「それも言えなかった」と、愛情表現をストレートに素直にできない主人公の”ひねくれた心情”が上手く描かれている部分です。
更に、唐突に「バス」の描写がありますが、「ブス」と「バス」と韻を踏んでおり言葉遊びが見られますね。
主人公は「君」が隣にいて欲しいと思っていますし、他の人ではダメな様子です。それでも「蕎麦」には「黄身」じゃなくちゃ、と別の言葉で「誤魔化して」います。
主人公はひねくれているのかもしれませんが、照れ隠しでそのような事を言ってしまったのでしょうね。
ここでも主人公の独特の愛情表現と言葉遊び(「君」と「黄身」、「側」と「蕎麦」、卵の入った蕎麦=「月見」蕎麦)が冴えています。
素直になれない
ここでも主人公のひねくれた心情が描かれています。
「ベイビー」「会いたい」とありますが、次には多分という意味の「メイビー」と「曖昧」という言葉が連なっています。
「メイビー」も「曖昧」も中途半端な意味の言葉です。
その後、また冒頭と同じく「ベイビー」「会いたい」と続き、最後は「ような気がしないでもない」と実に回りくどいフレーズで「会いたい」と表現しています。
「ベイビー」「メイビー」、そして、「会いたい」、「曖昧」「~しないでもない」とここでも韻を踏んで言葉遊びが見受けられますね。
ここでは「素直になれなくて」「ちゃんと言えなかった」といったフレーズがあり、主人公が自分自身のひねくれた性格を自覚しているのがわかります。
更に「ごめんね」「好きだよ」「さよなら」という言葉が並んでいます。本心は「好き」なのに「ごめんね」と「素直になれな」かったことに謝罪し、「君」に別れを告げます。
そして、冒頭の歌詞のフレーズがリピートされます。
バスの件(くだり)も、「時間通りに」来て、「ドアが閉まる」で締めくくられ、上手く繋がっていますね。
あいまいな気持ち
主人公は、別れた「君」のことを思い出し、不在の「君」に思いを馳せています。
「君」には「かばん」を「肩にかけた」際、必ず「ねじれた」状態にしてしまうという「癖」がありました。
主人公は「君」に注意をしてもいっこうに改善されることはなく、その「ねじれた」かばんを「元に戻してあげ」ていました。
主人公にとっては、注意してあげることや「ねじれ」を直してあげることも愛おしくてたまらなかったのです。
しかし、主人公の方から別れを切り出して、もうそういったことも出来なくなっているのです。
別れても尚、主人公は「君」のことを「愛しく」感じているようですね。そして、そこには自ら別れを選んでしまったことへの若干の後悔もあるように感じます。
ここはまた言葉遊びのリピートで、「会いたい」と「あ、今いい」が韻を踏んでいますね。そしてこの「あ、今いい」と「曖昧」の言葉遊びが見られるのは言うまでもありません。
「会いたい」という気持ちと、その逆の気持ちがない交ぜになって、曖昧で中途半端なままの心情が伺えます。
ねじれてもう戻らない
ここでは、「ごめんね 好きだよ さよなら」が、「好きだよ いまさら ごめんね」になっています。
「さよなら」が「いまさら」に変わり、更に「ごめんね」と「好きだよ」の位置が変わっており、主人公の別れた後の素直な気持ちを上手く表現しています。
そして「君」のかばんの「ねじれ」も二人の「ねじれ」た関係も、そのままで戻ることはなく、ラストは最初に出てきた「月」を「見上げ」て締めくくられています。
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さいごに
本楽曲「愛す」では、「君」のかばんの「ねじれ」と主人公の性格の「ねじれ」、更には二人の関係性の「ねじれ」(=別離)がリンクしています。
そして「ねじれ」を端的に表している巧みな言葉遊びの数々に、思わずニヤリとしてしまいますね。
歌詞とMVの独特さが相まって、とても癖がありトリッキーな印象が残る本楽曲「愛す」。
しかし、核となっているのは、「ねじれ」た性格故に、失恋に至ってしまった主人公の切ない心情という、とてもシンプルなものなのです。
本楽曲を手掛けたクリープハイプの今後の楽曲にも是非注目したいですね!